冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
まっすぐに見つめてくる瞳は真剣だ。こんなふうに見つめられては、恥ずかしくなってしまう。うろうろと視線をさまよわせ、私はごまかすように未来に視線を落とした。

「すまなかった。実家にはいつでも遊びに行くといい。働く必要はないと思っているが、この状態では今友人から請け負っている仕事も危ういんじゃないか? 実家で、母親に未来を預けて済ませればいい。場合によっては、この家にシッターも手配できる」
「そんな、私のためにそこまではもったいないです」
「きみの心身の健康は、未来にとって大事なことだろう。ずっと一緒にいるのが愛情でもない。コミュニケーションが確立されていない未来と一対一では疲れて当然だ。友人と会うのもいいだろう。それに」

豊さんは言葉を切り、一瞬言い淀んだ。それから、ぼそっと付け足すように言った。

「俺も……きみの話し相手にはなれる」

暗闇で、私の顔は赤くなっていなかっただろうか。豊さんの言葉があまりにおもいやりにあふれていて、どう反応したらいいかわからない。

「今度、未来のオムツ替えを教えてくれ。せめてもう少しまともに面倒を見られるようにする」
「はい。ありがとうございます」

豊さんは、優しい。
弟の望に対してわだかまりはあるのだろう。だけど、私と未来についてはものすごく気遣ってくれている。大事にしようとしてくれている。
どうしてここまでしてくれるのかわからない。妻子に不便なく暮らさせるためと彼は言うかもしれないけれど、そんな最低限の配慮の枠はとっくに超えている気がする。

豊さんは私と未来をどう思って傍に置いているのだろう。
聞けないけれど、少しだけこの優しさに甘えてもいいだろうか。


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