冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
5.優しさの理由



秋めいた空、私は実家にやってきていた。最近では週に二回ほど、こうして実家を訪れ、母に未来を頼んで仕事をするようにしている。

今日は藍が実家に打ち合わせに来ている。母が未来を公園に連れ出してくれている間に、リビングで打ち合わせをした。
ひと通り、仕事の内容をまとめ、ふたりでひと息。アイスコーヒーのグラスは汗をかき、母手製のコースターはしっとりと濡れている。秋めいてきているけれど、まだまだアイスコーヒーの美味しい時期だ。
藍のグラスにアイスコーヒーを追加する。私のグラスにも追加して、ミルクを入れた。

「自由に実家に帰れるようになったのはよかったね。明日海もかなり楽になったでしょう」
「そうだね。困ったときの選択肢として実家に頼れるようになったのは大きいかな」

豊さんは私が実家に行くのも、こうして藍と会うのも自由にしていいと言ってくれた。おかげで、私は育児の息抜きもできるし、以前のように仕事もできて助かっている。
さすがに奥村フーズで働くのは、豊さんの仕事にも関わってくるのでやめておいた。表向き彼は私と結婚したことを公表しているそうだ。だけど、未来の存在などをどこまで周囲に話しているかわからない。公式の場に出ることのない妻なら、私は息をひそめてじっとしているのがいいのだと思う。

「豊さん、私にすごく気を遣ってくれて、平日帰れる日は早く帰ってくるの。私と未来と食卓を囲んで、その後はお部屋で仕事してるみたいなんだけど、未来が泣いていたりすると出てきて、『手伝うか』なんて声をかけてくれるんだ」
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