冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
その晩は、実家からお惣菜のおすそ分けをもらい帰宅した。追加で豚肉を焼いていると、豊さんが帰宅した。今日は夕食を一緒に食べると連絡がきていたのだ。

「おかえりなさい」

キッチンから声をかける。豊さんはベビーゲート前で座り込んで遊んでいた未来を抱き上げ、私を見た。

「ただいま」

一瞬、くらりと眩暈に似た感覚を覚える。
未来と豊さんはこうして並んでいると、本当によく似ている。同じ色の髪と瞳、顔の造作。明らかな血の繋がりを感じる。
これは、私のひいき目でそう感じるのだろうか。いや、ふたりが並んでいるところを見れば、多くの人が父娘であると疑いもしないだろう。

「明日海、夕食を聞いてもいいかい?」

豊さんが遠慮がちに言うので、私はハッとして笑顔を作った。

「お肉を照り焼きにしてます。照り焼きソースごとキャベツの千切りにどさーっとのせますから、ごはんがはかどりますよ。あとは、うちの実家から切り干し大根の煮物と、蕪の酢の物をもらってきてます」
「そうか。楽しみだ。未来は食べられるのか」
「未来は味付け薄めで薄切りお肉を細かく切ったものを作ってます。煮物と酢の物はちょっとまだ味が濃いので、代わりにもらった蕪を蒸して餡をかけてますよ」

豊さんは未来を覗き込み、優しく微笑む。

「よかったな、未来。一緒にお肉が食べられるぞ」
「あーい」

未来はいい返事をしてにこにこ笑い返している。最近は豊さんと接する機会が増えたせいか、人見知りすることもなくなった。むしろ、豊さんがいるときは膝に乗りたがったりするくらいだ。

本物の家族みたい。
そんな言葉が脳裏に浮かんだ。すぐにそれを打ち消す。
考えてはいけないことだ。
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