冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
十八時過ぎ、私は夕食を作り終え家事を済ませた。すると、未来が起きて、和室からよちよちとひとりで出てくるではないか。

「未来、起きたの? おはよう」
「まま」

表情がうつろなのはすぐにわかった。そして未来の顔は赤い。気のせいじゃない。
抱き上げ、熱を測った。三十七度八分、微熱だ。

「風邪ひいちゃったかな」

病院に行こうか。しかし、ここに引っ越してきてからまだ小児科のお世話になっていない。スマホを取り出し、近所の小児科を検索した。
困ったことに、近所の病院の診察は十八時までで終わりだ。何件か電話をかけたけれど、時間外はアナウンスが流れるだけの病院がほとんど。
そうしているうちに未来の熱はどんどんあがってきた。

「うそ、三十九度五分?」

体温計を見て驚く。未来が起きだしてきてまだ一時間ちょっとだ。これほど急激に熱があがるなんて。

未来は過去一度、突発性発疹を経験している。そのときもこのくらい熱が出て、慌ててしまった。幸いなことに朝だったので、予防接種などでお世話になっていたかかりつけの小児科に駆け込むことができた。
どうしよう。こんなに熱があるのに、どこの病院にかかったらいいかわからない。

「ままぁ」

未来がしくしく泣きだした。それは力ない泣き方で、普段の彼女からは想像もできない。身体が苦しいのだろう。
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