冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「未来、苦しいね。かわいそうに」

私は抱き上げて、よしよしとゆする。しかし、未来をどこに連れていけばいいのかわからない。どうしよう。救急相談にかけてみればいいだろうか。
すると、ドアが開く音がした。豊さんが帰ってきたのだ。

「明日海、どうした」

泣きそうな顔をした私と真っ赤な顔の未来を見て、豊さんが顔色を変えた。

「未来が、高熱で……」

豊さんは驚いて、未来の額に手を当てた。

「病院は」
「この近所の小児科はどこもしまっていて……今どうしようかと」
「少し先だが、準夜間診療の病院がある。子どもも見てくれるかもしれない」

豊さんはすぐにスマホを取り出し、コールした。
病院に連絡をつけ、スマホを切ると、未来を受け取りながら言う。

「見てくれるそうだ。車を出すから、きみは未来の母子手帳と保険証と乳児医療証を用意して」
「はい!」

豊さんが未来をあやしてくれているうちに、私は急いで病院の準備をした。言われた通り、未来の受診に必要なもの。お尻ふきやオムツなどの外出用品をカバンに入れる。
作りかけの夕食は蓋をしてそのままに。冷蔵庫にしまえるものはしまった。
見たことがなかったけれど、このマンションの地下には駐車場があり、そこには豊さんの車があった。驚いたことに後部座席にはチャイルドシートが取り付けてある。

「こんなこともあろうかと準備しておいてよかった」

豊さんは仏頂面で言い訳めいたことを言いながら、未来をチャイルドシートに座らせる。私は涙が出てしまって、ただただ豊さんの思いやりに感謝するしかない。
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