冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
一時間ほど処置室で点滴をされ、ふらふらと帰宅した。すっかり元気になった未来は、家で母がすりおろしたりんごを食べている。家では雛鳥のように口を開けるだけだったのに、今は自分でスプーンを持っている。

「明日海、それなら未来ちゃんは熱が下がるまでうちで預かるわよ」

母がそう提案してくれる。

「一緒にいたら世話を焼いちゃうでしょう。看病疲れよ。あちらのおうちでゆっくり休みなさい」
「でも、お母さん」
「未来ちゃんの着替えは、この家にもいくつか予備があるから大丈夫。それに未来ちゃんを見てごらんなさい。食べようとしてるわよ。自分で食べなくなっていたのは、病気で甘えっこになっちゃってたのね」

母の言うことは一理あるかもしれない。不調から未来は我儘で寝ぐずりも多く、手間のかかる状態だった。かなり豊さんも手伝ってくれたけれど、私でないと駄目というときも多かった。

「ごめん。お願いしてもいいかな」
「いいわよ。ほら、ペットボトルでスポーツドリンクを買っておいたから持っていきなさい。家事なんかしちゃ駄目よ」

私は未来を抱きしめ、別れを惜しんでから実家を出た。私が病院に行くときもけろっとしていた未来だけど、夜になれば私の不在で泣くかもしれない。
母や父に苦労をかけるのは申し訳ない。でも、だからこそ早く治さなきゃ。


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