あなたが私を見つける日まで
「クラスメイトもお前の事を待ってる。峯岸の席もあるし、皆お前に会いたいって言ってるぞ」



嘘だ、そんなの口からでまかせに決まってる。


自分のクラスの人の顔も名前も良く知らない私に、誰が会いたいだなんて言うの。


そうやってクラスメイトの事を話題に出す先生は卑怯だし、この状況はまるで中学の頃みたいだ。


「…はい」


最早それしか言えない機械のように言葉を発した時、



「せんせー、体温計何処っすかー?」



いきなり保健室のドアが開く音がして、ずっとずっと聞きたかったあの声が鼓膜を震わせた。


「はいはい、体温計ね。どうしたの?」


「いやー、テスト赤点回避の為に勉強頑張ってたら頭痛くなったんすよ。テスト最終日で俺の身体も限界なんすよきっと」


遠くから心配そうに私を見ていた竹本先生の姿が消え、代わりに体温計を手にした日向君がふらりと現れた。


(…日向君、)



こんな所、好きな人にだけは見られたくなかった。



「それでだな、峯岸。まだ早いかもしれないが、このままだとしっかりした成績も付けられないし、ちゃんと教室に来ないと大学入試にも関わってくるんだ」


先生の言葉は、容赦なく私の心に穴を開ける。


私だって、出来る事ならすぐにでも教室に行きたいよ。


いつ来るか分からない日向君を此処で待つんじゃなくて、彼の隣の席に座って話してみたい。
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