あなたが私を見つける日まで
でも私の身体がそれを許さないんだから、先生の言う事は全て叶わない夢なんだ。



「…2学期からで良いから、1時間だけでも顔を出すのはどうだ?他の先生にも話をつけてみるし、それこそ峯岸が良ければ」


「っ、」


先生はいつでも容赦ない提案をしてくる。


私は、自分の身体に巻きついた毛布をぎゅっと握りしめた。



視界の隅で、体温計を脇に挟んだ日向君がこちらを見ているのが映った。



…やっぱり、教室に行かないと駄目なのかな。


頭の中では色々な想いが駆け巡っていたけれど、先生には逆らえない私が再びイエスマンになろうと口を開いた、その時。



「あ、せんせー!探してたんすよ!」


日向君が、信じられない程の大声でこちらを指さしながら叫んだ。


「おお、柳下。どうしたんだ」


「今、2年の廊下で坂本と宮田が掴み合いの大喧嘩してるんすよ!誰も止めらんなくて、多分学級委員が先生の事探してると思うんすけど」


えっ、掴み合いの大喧嘩?


思わず目をひんむいたのは私だけではなく、先生は慌てて立ち上がった。


「なんて事だ、理由は?」


「多分、今日の部活でどっちがアリーナ使うかで揉めたんだと」


はあーっ、と大きく息を吐いた先生は、


「伝えてくれてありがとな。行ってくる」


と、私の解答用紙を持ったまま保健室を飛び出した。
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