あなたが私を見つける日まで
「せんせー、寝不足!次の授業サボって寝ていいっすよねー?」
たった今保健室のドアを開けて大声をあげながら入ってきた、この人を除いて。
「はいはい、まずは健康カードに記入して熱を計って。話はそれからよ」
噂をすれば、と私に目配せをした先生は、テキパキとその人に指示出しをする。
「あ"ー頭痛ぇ、睡眠時間3時間はキツいわやっぱ」
何処から出たのか、と疑問に思う程の低い声を出しながら頭をグリグリと押さえたその人は、ふっと顔をあげて。
「お、見ーつけた!」
いつもの様にベッドの上に座った私を発見して、太陽のように明るい笑顔を浮かべた。
「それで?柳下君、昨日は何時に寝たの?」
「4時!さすがにやばいっすよね、坂本とゲームしてたらあんな時間になったんすよ。…あ、6度2分だわ」
「全くもう…。高校2年生になったんだから、少しはゲームから身を引いたらどうなの」
怪我人が座るソファーに腰を下ろした彼、柳下 日向(やなぎした ひなた)君と養護教諭の竹本先生の話し声は、時計の針が刻まれる音しか聞こえない室内によく響いた。
「やだなぁ先生、俺からゲーム取ったら何も残らないっすよ」
「勉強があるでしょう。…ところで、次の教科は何なの?」
竹本先生が折れたのが分かった日向君は、頭が痛いと言っていたにも関わらず満面の笑みを浮かべる。