あなたが私を見つける日まで
「この間、凛ちゃんが話してくれたの全部聞いてた」


光る笑顔を絶やさぬまま、彼はそう口にした。


「あの時、何か言おうと思ってたんだけど何も言えなくて、後で保健室来て伝えようと思ってたけど補習と丸被りでさぁ」


ツイてないよな、と、日向君はこんな時でも私の事を考えて笑顔を向けてくれる。


「そんな、別に私の話なんて何にも需要ないし、」


「何言ってんの」


その笑顔がやけに苦しくて、こんな時でも高鳴る胸を鎮めたくてそう言いかけたのに、逆に日向君に遮られた。


「あの先生は頭硬いからあれだけど、別に無理して教室来なくていいんだよ。…凛ちゃんは、もう我慢しなくていいの」


そこでタイミング悪く体温計が鳴り響き、小さく息を吐いてそこに表示された数字を見た彼は、


「おいおい38度超えてんだけど、マジかよ」


と、慌てて冷えピタを取りに行こうと立ち上がり、ふらりとよろけた。


「ちょ、日向君!」


ベッドの上に座っていた私は、慌てて身を乗り出して彼の手を掴む。


大好きなその人の手は確かに大きくて、でも太陽よりも熱く燃えていた。


「おっと、ごめんな。これ結構ガチめの風邪だわ」


既のところで私の手を握り締めて体勢を立て直した彼は、繋がれた手をゆっくり擦りながら微笑んだ。


心做しか、その耳が赤くなっているように見えたのは気のせいだろうか。
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