あなたが私を見つける日まで
彼は、何かと理由をつけて頻繁に保健室を訪れるようになった。


それは朝のHR前、授業中、お昼休み、放課後と多岐にわたり。


その度に保健室の窓側のベッドに居る私に気付いた彼は、絶対に私に対して“保健室登校をしている女”という負のレッテルを貼ったはずなのに、


『お、見ーつけた!』


『凛ちゃんも1年だよね?よろしく!』


と、まるで友達に話し掛けるかのように眩いばかりの笑顔を向けてくれた。


最初は警戒心を剥き出しにしていた私も、彼があまりにも明るく話し掛けてきてくれたお陰で、次第に凍った心が溶けていって。


転入して数週間後には完全に保健室の常連となった日向君に対して、私はいつの間にか素の笑顔で話せるようになっていった。



日向君は突き指ばかりしていたのにバスケ部に入部して、男女問わず沢山の友達に囲まれている。


彼が保健室で寝ている時はいつも数人の友達が迎えに来るし、登下校中の日向君の笑い声は高く空を駆け上がり、ひと足先に保健室に着いた私の耳にも届いてくる。


高校生活をこれでもかというほど楽しんでいる彼は、皆の憧れの的で。


モテ期真っ只中で、何もしなくても皆の笑顔を引き出す男、それが柳下 日向君。
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