あなたが私を見つける日まで
「…ねえ、ねえって!聞いてる?」


「え?」


いつの間にか物思いにふけてしまっていたらしく、私は日向君の大声を聞いて我に返った。


「だからー、俺クマ酷くない?ほら見てよ、この辺真っ黒じゃね?」


いつの間にかベッドを抜け出して保健室にある鏡を覗き込んでいた彼は、振り返って大きな声をあげる。


でも私達の距離は離れすぎていて、クマがあるか無いかなんて分かりゃしない。


「ごめん、全然見えない。こっち来てくれない?」


「はいよー」


間延びした声で返事をした日向君は、真っ直ぐに私の座るベッドの横に丸椅子を持ってきて腰掛けた。


「ほら、ここ」


目を瞑ったままの彼が指さした所は確かにクマになっていて、少しだけ黒くて、


でもそれ以上に、日焼けした肌が赤ちゃんみたいにすべすべなのが分かって、彼の黒く直毛の髪の毛が艶を放っているのが見えて。



ああ、日向君って本当にイケメンだ。


綺麗、という言葉を既のところで飲み込んだ私は、


「本当だ、クマ出来てるから今すぐ寝た方がいいよ」


と、何事も無かった風を装って声を掛けた。


「やっぱそうだよなー。あ、じゃあさ、凛ちゃんファンデかコンシーラー持ってない?」


長いまつ毛が震え、綺麗な二重に包まれた栗色の瞳が瞬きを繰り返す。
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