厄介なイケメン、拾ってしまいました。
1 結婚指輪のゆくえ
「そんな哀れな目を向けるならさ、拾ってよ、オネーサン」
酔い冷ましの水をコンビニで買ったあと、お店を出たところで、男の子に声を掛けられた。
そのイケメン風の男の子は、アスファルトに下ろしていた腰を上げると、私を見上げてニコっと微笑んだ。
黒いパーカにジーンズ。整えられていない黒髪はボサっと狼のように跳ねているけれど、不潔感は感じない。たぶん、二十歳かそれくらい。
「ねえ、オネーサンってば」
慌てて立ち去ろうとした私の腕を、彼はぐっと掴んだ。
「見てたでしょ、俺のこと」
「……」
見てたよ。
コンビニの出入り口の近くに、そんな大きなリュック下ろしたイケメンが、ドカっと座ってたら見ちゃうじゃん。
「何も言わないってことは、見てたんだ」
「離して」
「ヤダ。俺、今日泊まるとこないんだよね」
「いやいや、私既婚者だし」
「えー、指輪してないじゃん」
え?
私は掴まれていた腕から彼の手を振りほどき、自身の左手をマジマジと見つめた。
な、ない!
結婚指輪!!!
「あーーーー! 指輪!!」
私は先程までのことを思い出す。
同僚と飲んでて、カクテルをこぼしちゃって、手がベタベタになっちゃったから、手を洗いにお手洗いへ立って、それで――
「居酒屋!!!」
私は来た道を急いで引き返した。
居酒屋へつくと、お手洗いへ直行する。
確か、この洗面台の辺りに……
……ない。
嘘でしょ。
「オネーサン」
肩を落としてお手洗いから出た私にかけられる、さっきのイケメンの声。
「何、バカにしに来たの……?」
顔を上げてはっとした。
イケメンくんは、ニカッと笑う。
「これ? オネーサンの大事なもの」
彼の手の中には、なぜか私の結婚指輪があったのだ。
酔い冷ましの水をコンビニで買ったあと、お店を出たところで、男の子に声を掛けられた。
そのイケメン風の男の子は、アスファルトに下ろしていた腰を上げると、私を見上げてニコっと微笑んだ。
黒いパーカにジーンズ。整えられていない黒髪はボサっと狼のように跳ねているけれど、不潔感は感じない。たぶん、二十歳かそれくらい。
「ねえ、オネーサンってば」
慌てて立ち去ろうとした私の腕を、彼はぐっと掴んだ。
「見てたでしょ、俺のこと」
「……」
見てたよ。
コンビニの出入り口の近くに、そんな大きなリュック下ろしたイケメンが、ドカっと座ってたら見ちゃうじゃん。
「何も言わないってことは、見てたんだ」
「離して」
「ヤダ。俺、今日泊まるとこないんだよね」
「いやいや、私既婚者だし」
「えー、指輪してないじゃん」
え?
私は掴まれていた腕から彼の手を振りほどき、自身の左手をマジマジと見つめた。
な、ない!
結婚指輪!!!
「あーーーー! 指輪!!」
私は先程までのことを思い出す。
同僚と飲んでて、カクテルをこぼしちゃって、手がベタベタになっちゃったから、手を洗いにお手洗いへ立って、それで――
「居酒屋!!!」
私は来た道を急いで引き返した。
居酒屋へつくと、お手洗いへ直行する。
確か、この洗面台の辺りに……
……ない。
嘘でしょ。
「オネーサン」
肩を落としてお手洗いから出た私にかけられる、さっきのイケメンの声。
「何、バカにしに来たの……?」
顔を上げてはっとした。
イケメンくんは、ニカッと笑う。
「これ? オネーサンの大事なもの」
彼の手の中には、なぜか私の結婚指輪があったのだ。
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