厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「ん……はぁ……」

 息継ぎの音と、時折口から垂れた水音だけが響く。

「こーら、……ふぁあ……」
「んん……怒る気……はぁ、ないでしょ……」
「ん、あ……仕方ないでしょ……」

 息が出来なくなって、口を離した。

「今日飼い始めたばっかのペットだもん」
「そっか」

 蓮くんはそう言うと、私のおでこに自身のそれをコツンとぶつける。

「じゃあさ、しっかり躾けてよ。俺のこと」

 そう言って、彼はちゅっと鼻の先にキスを落とす。
 それで、耐えられなくなって私は蓮くんの口に自ら唇を寄せる。

「もっと……して……?」
「ん。仰せの通りに」

 蓮くんは何度も私の唇をついばんていく。チュッチュッと、わざと音を立てて。

「ん……足りないよ、もっと」
「はーい」

 そういうやいなや、また舌が私の中に差し込まれて。

「んん……ふぁあ……」
「ご主人さまは、これをお望みなんだ」

 キスの合間にそう囁いて、私の唇を貪っていく。

 もう、これは、敬愛のキスなんかじゃない。
 欲情にまみれたキス。

 体液同士が絡み合う。
 その度に、身体の芯がもっと先を欲する。

「ダメ……足りない」

 彼との口づけに堕ちていく。
 望めば、きっと蓮くんは察してくれる。

「へえ……いいよ。俺、おりこうさんなペットだから」

 ほら、やっぱり。

「もっと喜ばせてやるよ」

 彼はキスを落としながら、私の服に手をかける。
 シャツの裾から侵入した手が私のお腹をなぞる。
 身体は素直に反応する。

 ああ、ダメだ。
 もっと、もっと欲しい。

 それで身体をくねらせれば、彼は私の衣服をいとも簡単に剥ぎ取ってしまう。

「紗奈、綺麗」

 そう呟きながら、彼の手が、舌が、私の全身を這い回る。

「ん……あぁ……」
「もっと聞かせてよ。紗奈のイイトコ、もっと知りたい。俺、従順なペット、だからさ」

 脇腹、ももの内側、胸の先……。
 普段誰にも触らせないところを、彼はここだ、とばかりに舐め取っていく。
 同時に、私の思考を、どんどん溶かしていく。

 だんだんと大胆になる私。
 彼はそれでも、私の身体を舐め続ける。

「もっと溺れろよ。アンタもそれを望んでたんだろ?」
「もう……限界。早く……ほしいの」
「まあ、そんなに腰動かしてたらね……俺の全部、あげる」

 そう言うと、今度は自身の服を剥ぎ取った蓮くん。
 急いたようにそのまま私に覆い被さって、肩口に顔を埋めた。

「ま、俺も限界」

 彼はそう言うと、また私の首をペロペロ舐め始める。
 でも、それは犬のするそれではない。唇が、しっかりと押し付けられるから。

「あ……ん……」

 もっとしてほしくて、彼の頭をぎゅっと押し付けた。
 もう、構わない。
 だって、ペットだもん。

 と、不意に硬いものが私のももに押し当てられる。
 それは、居場所を求めて私のももの上を上下に動く。
 熱くて、とろんと私のももが濡れていく。

「ねえ、いい?」
「ここまでしといて、今さらそれ聞く?」
「だって、紗奈、既婚者じゃん」

 私は既婚者。
 でもね、今目の前で頬を熱くして、熱い吐息とともに、潤んだ野獣みたいな目をした彼は――

「ペットだから、いいの」
「あー、もう限界。無理」
「ああん!」

 そのまま、私の中に早急に入り込んできた熱。
 それは激しく、私の中を掻き乱していく。
 私の身体が、思考が、全部彼に溺れていく。

 その夜、私と蓮くんは、窓の外が白むまで互いに溶け合った。
< 18 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop