厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「それ、私の!」

 慌てて指輪に手を伸ばした。
 と、彼は腕を高く上げてそれを阻止する。

「おっと、アブねっ!」

 そして伸ばした私の右腕を捕まえると、そのままなぜか引き寄せられる。
 だから、私は彼の腕の中に飛び込んだみたいになってしまった。

 なぜか、拍手の起きる居酒屋店内。

「兄ちゃん、やったな!」
「おめでとう!」

 待って待って待って!
 何がどうしてそうなったの!?

 彼はというと、私の肩を抱きながらはにかんで、私の指輪を持っているはずの手で後頭部をクシクシ掻いていた。

「どーもどーも」

 そこへやってくる店員さん。
 どうやら、さっき私が同僚と飲んでいた時にはいなかった人らしい。

「いやぁ、まさか我が店でプロポーズ成功させるお客様がいらっしゃるとは!」

 待って!
 プロポーズって何だ!?

「いやぁ、本当に良かったっす」

 いやいや、キミも合わせなくていいから!

「お祝いに、ビール一杯、無料で!」
「あざっす!!」

 はぁ!?

 勝手に進んでいく勘違いに置いていかれていると、彼が私の耳元で囁いた。

「飲んでいこうよ。言うこと聞いてくれたら、返してあげる、これ」

 そう言って、彼はキラリと光る指輪を私に見せてきた。
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