厄介なイケメン、拾ってしまいました。
8 快感と罪悪感
「もう無理……」
何度彼に溺れただろう。
「えー、俺まだ足りない」
私の頭を腕枕しながら、蓮くんが耳元で言う。
「ペットは飼い主の言うことをききなさい」
「はーい」
優しく諭せば、優しい返事が帰ってくる。
それにしても、若いって、すごい。
はあはあ息を切らしながら、疲れとともにやってきた微睡みに身を任せていると、不意に私の髪に触れる。
そのまま頭を撫でられて、ピクンと肩が震えた。
「なんか、変な感じ」
「何が?」
「ペットに、頭撫でられてる」
「そこ? 俺ら、もっとすごいことしてると思うけど」
「確かに」
ふう、と息をつけば、このベッドが夫婦のものだったことを急に思い出して罪悪感が募る。
左手を掲げた。
そこにあるのは、キラリと輝く結婚指輪。
永遠の愛を、誓って交換したはずなのに。
あなたは、どこにいますか?
あなたは、私が見えていますか?
あなたには、私は必要ですか?
知ってるよ。
出張って言いながら、どこか違うところにいるのを。
出張っていう便利な言葉を並べて、好きなことしてるのを。
この指輪だけが、私たちを唯一繋げてくれている。
だから、大事だったのに。
「それ、今見る?」
蓮くんは耳元で大きなため息を溢した。
あーあ、私、何やってるんだろう。
イケメン拾って、ペットとか言って、言い訳つけて、ヤッてるって。
最低じゃん。
「後悔、してる?」
「え?」
「そんな顔してた」
思わず彼の方を見る。なぜか、とても泣きそうな顔をしていた。
「んー、多少はね」
「多少、かい!」
それで蓮くんが急に笑いだしたから、私はぎゅっと彼に抱きついた。
「何?」
「したかったから、した」
蓮くんは、私のおでこにちゅっと軽くキスを落とす。
「じゃ、もっかいして?」
「それは無理」
「ちぇっ」
「おやすみ」
「ええー」
そう言いながらも、彼が私の頭を撫でる手つきは優しかった。