厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「どうして? どうしてそんなにヘラヘラしてられるの?」

 いつも、私のことを試すようなことして。

「そんなに人の心弄んで楽しい?」

 私を、振り回して。

「ペット、とか変な称号つけられて、嫌じゃないの?」

 縛られればそれを逆手に、私を惑わせて。

「自分の三大欲求満たせれば、それで満足?」

 私のことなんて、どうでもいいんでしょ?

「もうちょっと、まともに生きられないの?」

 振り返り、キッと睨んだ。
 ももに触れていた手は、離れていく。背中の温もりも、離れていく。
 同時に、こちらに向けられたのは、冷たい目。

「じゃあさ、アンタのいう『まともな生き方』って何?」

 え?

「敷かれたレールの上歩いて、何も荒立てることなく一生を終えれば勝ち? それなりの人と出会って、結婚して、家庭っていう窮屈な枠に押し込まれて、アンタはそれで満足なわけ?」

 蓮くん……?

「オトナってバカだよな。ただしく生きろ、とか、誠実に生きろ、とか、そんなことばっかりいうくせに、裏では何してるかわかんない。ママ活してる人だって、誰にも言えない。アンタだって、旦那にバレないように俺飼ってるじゃん」

 確かに、そうなんだけど。

「まともに生きるなんてつまんねーんだよ。正直に生きたって、バカを見るの。何が起きるか分かんね―毎日生きてる方が、俺はよっぽど楽しい」

 蓮くんは、そこまで言い切って、ふいっと目をそらした。

「とか言って、俺ももう21。いつまでコドモでいれるんだっつー話だよな。もっとこのまま、自分の好きに生きれたらいいのに」

 そう言う彼の瞳は、色を失ったように震えていた。
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