厄介なイケメン、拾ってしまいました。
2 添い寝屋さん
「なーんか、いかにもって感じ。趣味悪」

 自分で選んだくせに、部屋に入った途端に彼はそう言った。
 そしてそのまま、天蓋付きのベッドに大きなリュッごと、ドサッと横になる。

「寝心地は、まあまあ」

 何様だ。

 私はため息をこぼしながら、隣のソファに腰掛けた。
 いかにも、な、ピンク色に、笑うしかない。

「連絡しなくていーの? 旦那さん」
「いい。家にいないから」

 先程よりも盛大なため息をこぼして、頭を抱えた。
 既婚者、アラフォー、なのに今、見知らぬ若者と、ラブホの部屋にいる。

 これってどういう状況なの?

「旦那さんと、上手くいってない?」
「出張中なだけ」
「そっかぁ。仲悪かったら、オネーサンの彼氏のフリして、オネーサンの離婚に協力して、お金もらおうと思ったのに」

 サイテーか。
 しかも、その設定だとこっちがひどく慰謝料払わされるわ。

「ってかさ、旦那さんいないならオネーサンの家でも良かったじゃん」
「良くない!」

 いいわけあるか。
 あそこは、家族の家。
 そこに、見知らぬ若い男の子を入れるなど、決して……。

 一人脳内で憤慨していると、彼は私の隣にさっと腰を下ろした。

 !?!?
 近い。距離が、近い。物理的に、近すぎる。
 
 彼のももと私のももが触れ合う。

「オネーサン、……」
「はい!?」

 耳元で言われて、身体が思わずピクリと跳ねる。
 彼はケラケラ笑った。

「なんか、期待した?」
「期待? はぁ? するわけ……」
「顔、真っ赤」
「……」

 期待、ではない。
 日本語の使い方、間違ってる。

「ま、それはそれとして。あのさ、」

 何事もなかったかのように、彼は続けた。
 まだ、ももがぴったりくっついてるのに。 

「今日は特別。オネーサンと、添い寝してあげる」

 彼はそう言って、ウインクを飛ばしてきた。
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