厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「頑固だなぁ……」

 そんな囁きが聞こえた。
 頑固だよ。
 でも、キミがそうさせるんだよ。
 これは、防衛本能だよ。
 傷つかないための。

 なのに。

 気づいたら、身体がふわんと宙に浮く。

「え!?」
「オバサン、なんでしょ? なら、なおさらソファで寝たら体痛くなりそうだから」
「余計なお世話!」
「暴れなーい。落としちゃうよ?」

 ジタバタするも甲斐なく、彼は私を持ち上げたままははっと笑う。そして――

 ――ボスッ

「着地成功」

 ――フワッ

 え、掛け布団……

 そして、そして私の隣にゴロンと横になる彼。

「キミは、布団に入らないの?」
「ん。警戒されてるからね、俺。それに、オネーサンが寝たら、どーせソファ行くし」

 そう言いながら、彼は急に頭を撫でてきた。
 なのに。

 大きな手。温かい手。優しい手。
 あれ、どうして? 私、眠……

「布団入らないならさ、隣にいていいよ」
「りょ。隣で寝てほしいってことね」
「違……」

 言い返したいのに、眠気が勝る。
 だめだ、もう、寝たい。
 悔しいけれど、気持ちいいよ、キミの手。

「なんてね。オネーサン、お人好しすぎるっしょ」

 彼のケラケラ笑う声がする。
 もう目を開けてはいられない。

「ま、いーや。おやすみ、オネーサン」

 私はそのまま、意識を手放した。
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