不倫の女
 ずっとこのまま一緒にいられたらとしたら、それはとても嬉しいけれど、
 
 その過程で私は絶対に苦しむ。
 
 彼には家庭があるのだから。

 しばらくして、彼から連絡が来た。

 私たちはデパートの駐車場が開く時間に待ち合わせをした。

 デパートの屋上の隅が私たちの待ち合わせ場所だった。

 私はいつも彼より早く着いていた。
 しかし、その日は彼の方が早く着いていた。

 私と目が合うと彼は仔犬のような笑顔を見せた。

 この愛くるしい笑顔に別れを告げなくてはいけないのか。

 別れることを決めても、やっぱりこの人のことを愛している。

 会わないまま、別れを告げた方が良かったと後悔した。

 顔を見て別れるのは辛い。
 このまま逃げてしまいたい。

 一方でその気持ちの裏側には、愛されたいという想いが強くなっていく。

 もう終わりだと考えているから、より強くなっている。
 
 理性の内側から罪悪感が生まれるのを感じる。
 
 その罪悪感が理性を覆いつくしたのも束の間。

 性欲がそれらを喰いつくしていくのを感じた。

 今日ほど強いものを感じた日もなかった。
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