不倫の女
「すみません。ではお願いいたします」
ぎゅっと目をつぶる。
痛みがやってくるのを待つ。
奥様の深呼吸が聞こえる。
こんなときでも、彼との思い出が頭の中に散らばっている。
そのどれもが眩しくて美しい。今日の夜、私も彼の後を追うことにしよう。
とふと思った。
奥様に話している間に、やっぱり彼のことをどうしようもなく愛していることを実感したから。
一緒に死んであげられれば良かった。
一人で逝かせてしまって、ごめんね。
私もすぐにあなたのそばに行くよ。