わけあり家令の恋
もともと口数が少ないのか、家令の杉崎も女中頭も主人のことはほとんど何も語ろうとしない。
上に立つ彼らを見習っているのか、ほかの使用人も同様だった。
しかし幸なら何か教えてくれるかもしれない。
「ねえ、幸。わたくしはまだお目にかかったことがないのだけれど、旦那様はどんな方なの?」
ところが彼女の答えも期待したものとは違っていた。
「申しわけございません、奥様。実は私もまだお会いしたことがございません」
幸の話では、先代が亡くなって代替わりをした時に使用人をかなり減らし、ほとんどは新しく雇われた者ばかりだという。
彼女もそのひとりで、当主にはまだ会ったことがないそうだ。
私付きの女中になるまでは、杉崎ともほとんど顔を合せなかったらしい。
「お役に立てず、申しわけありません。女中頭の栄さんか、杉崎さんならよくご存じだと思うのですが」
「わかったわ。どうもありがとう」
私は幸をその場に残し、夫の部屋へと向かった。
奥の角部屋に当たるそこは広い庭に面していて、日当たりはよさそうだが、いつもカーテンがしまっている。
とにかく早くよくなってほしいと思いながら歩いていると、ちょうど家令の杉崎が部屋から出てくるのが見えた。
おそらく主の様子を見に来たのだろう。
「おはようございます、杉崎さん」
私が声をかけると、杉崎は驚いた様子で立ち竦んだ。私がここにいることが相当意外だったらしい。
上に立つ彼らを見習っているのか、ほかの使用人も同様だった。
しかし幸なら何か教えてくれるかもしれない。
「ねえ、幸。わたくしはまだお目にかかったことがないのだけれど、旦那様はどんな方なの?」
ところが彼女の答えも期待したものとは違っていた。
「申しわけございません、奥様。実は私もまだお会いしたことがございません」
幸の話では、先代が亡くなって代替わりをした時に使用人をかなり減らし、ほとんどは新しく雇われた者ばかりだという。
彼女もそのひとりで、当主にはまだ会ったことがないそうだ。
私付きの女中になるまでは、杉崎ともほとんど顔を合せなかったらしい。
「お役に立てず、申しわけありません。女中頭の栄さんか、杉崎さんならよくご存じだと思うのですが」
「わかったわ。どうもありがとう」
私は幸をその場に残し、夫の部屋へと向かった。
奥の角部屋に当たるそこは広い庭に面していて、日当たりはよさそうだが、いつもカーテンがしまっている。
とにかく早くよくなってほしいと思いながら歩いていると、ちょうど家令の杉崎が部屋から出てくるのが見えた。
おそらく主の様子を見に来たのだろう。
「おはようございます、杉崎さん」
私が声をかけると、杉崎は驚いた様子で立ち竦んだ。私がここにいることが相当意外だったらしい。