細胞が叫ぶほどの恋を貴方と
週が明け、末永さん――改め幸俊さんと、香代乃さんの離婚が成立した。本当に別居をしていた三年間で全てのことを決め、離婚届も用意し、あとは提出すればいいという状態だったらしい。
晴れて独身となり、何の憂いもなく正式な恋人同士になった夜。いつも通り幸俊さんの部屋で夕食をとっていると、宅配便が届いた。大きめの段ボールで、差出人の名前を見た途端、彼はその整った顔をしかめる。
差出人の欄には「本郷武一」とある。知らない名前だ。
「いや、芙希子もよく知っているやつだよ」
「ええ?」
「ケイ」
「ええ、ケイさん?」
幸俊さんが「ユキト」、香代乃さんが「カヨちゃん」で、わたし芙希子が「キコちゃん」となるからには、ケイさんも本名から何文字か抜き取られているだろうと思っていたけれど。
まさか「タケイチ」から真ん中の「ケイ」を抜き取っていたとは。それに予想外に本名が渋い。目鼻立ちのはっきりとした透明感のある童顔の美青年とのギャップが凄まじい。
そしてケイさんから送られた荷物の中身は、予想通り大量のスキンに潤滑液、明らかに布の面積が足りていないインナーウェアに、夜の玩具類――……。
「楽しんで! また店にも来てね~ ケイ」「今度キコちゃんの恋バナ聞かせて! あと道具の感想もね。カヨ」という呑気なメッセージカードが添えられており、わたしは苦笑し、幸俊さんは頭を抱えた。
ふたりの厚意はありがたいけれど、スキン以外はあまり必要ないかもしれない。
だってもうすでに、指先がピリピリと痺れ、身体の芯は熱く、彼を受け入れる準備はできているのだから。
それを伝えるため幸俊さんに寄りかかると、彼もすぐに察して、段ボールのスキンに手を伸ばしたのだった。
(了)