片翼を君にあげる③
「……あ〜良かった。やっと、自分を曝け出してくれたね?ツバたん。
それで、いいんだよ。言ったでしょ?この下剋上は、ボクとキミの戦い、なんだから」
「っ、……ミヅク、さん?まさか……」
清々しい、目的を達成してスッキリしたかのようなミヅクさんの表情と言葉に、俺は察した。
この下剋上は、"今の俺"の為に用意された下剋上。自暴自棄になっていた俺を改めさせる為に仕組まれた内容だったのだ、と……。
そう気付いて胸をジンッと打たれていると、ミヅクさんは人差し指を立てて口の前で揺らし、「チッチッチ!」と舌を鳴らして言った。
「あ、言っとくけど!ボクは別にキミの為に身体を張った訳じゃないよ?
ぜ〜んぶ、ミライきゅんのた〜め♪腑抜けたキミと対戦なんてミライきゅんにさせたくないから、ボクは一肌脱いだんだよ?」
「勘違いしないでよね〜」って付け加えて笑う意地悪な表情のミヅクさん。その様子を見て、緊張が解けた俺も思わず笑ってしまった。
しかし。
良い先輩を持った。次の再戦の下剋上は全力で臨もう、と気持ちを切り替えようとしている俺に、ミヅクさんは更なる驚きを与えてくる。
なんと、ミヅクさんは羽織っている白衣のポケットから"ある物"を取り出すと、俺に向かって差し出した。
それは、白金バッジ。夢の配達人の最高位の証である、たった三つしかない白金バッジの一つだった。
「でも、勝負は勝負。
この下剋上はツバたんの勝ち!だから、はい!」
「!っ、……え?」
「「え?」じゃないよ。コレが欲しかったんでしょ?だからあげる、はい!」
「そ、そんな!!受け取れませんよっ!!」
ミヅクさんのまさかの言葉と行動に、俺は驚いた。
慌てて立ち上がり、必死に身振り手振りで受け取れない事を表すと、ミヅクさんはそんな俺にムッとした様子で言葉を続ける。