片翼を君にあげる③
「い〜の!ボクがあげる、って!いいって言ってるんだから、い〜の!!」
「っ、だ、駄目です!って!!」
強引に渡そうとするミヅクさん。
必死に拒否する俺。
激しい攻防が始まった。
確かに、必要な物だ。
レノアを自由にしてやる為に必要で、俺を応援してくれている人達の為にも絶対に必要な物だ。
でも、こんな形で白金バッジを貰うのは俺も納得がいかなかった。
だって、白金バッジは俺にとっても幼い日から……。父さんに憧れて、夢の配達人になる、って夢を抱いた時からずっと憧れていた品物なんだ。
それなのに、こんなに簡単に手に入れるなんてーー……。
俺は、そう思ってたんだ。
そう、"こんなに簡単に"って思って……。まだ、ミヅクさんが俺に懸けてくれていた本当の重みに気付けていなかった。
暫くギャアギャアとしていたけど、俺の複雑そうな心境を察したのか、急にスッと大人しくなったミヅクさんが真剣な瞳で見つめて言う。
「本当に、受け取っていいんだよ?ツバたん」
「っ、でも……」
「この下剋上の本当の決着方法はね?事前に最高責任者とノゾみんに承諾してもらってたんだ。
"ツバたんが自らの命の大切さに気付いたら勝ち"って……。だから、正真正銘、この下剋上はキミの勝ちなんだ」
なかなか納得しない俺に、ミヅクさんはそう言った。
俺が確認の為に部屋の隅に居るノゾミさんに視線を向けると、ノゾミさんは真剣な表情でコクリッと頷く。
ノゾミさんはこういう場面で嘘を吐く性格ではない。私情を挟まず公平に判断出来る人だ。
ミヅクさんが言っている事は本当で、真の下剋上の決着方法は俺がこの下剋上の真の意味に気付けたら、だったのだろう。
それならば、……。
と、思いつつも、なかなか素直に差し出された白金バッジを見つめるだけで手が伸びない。
すると、
「全く。強情だね、ツバサは」
ガチャッ!と、部屋の扉が開くと同時にその声が聞こえた。
ーー……っ!この、声は……。
まさか、と、視線を向けたその先に居たのはなんと……。