片翼を君にあげる③

「ミライさ……」
「ーーわぁ〜!!ミライきゅん!来てくれたんだぁ〜!!」

そこに居たのはミライさん。
驚いて名前を呼ぼうとしたが、ミライさんの登場でテンションが上がったミヅクさんの声に、俺の言葉はあっさりとかき消される。

一体、何故ここにーー?

そう尋ねたかったのに、遮られてしまった。
ミヅクさんはその場を駆け出しミライさんに抱き付くと、

「ボク、頑張ったよ〜!褒めて褒めて〜♪」

と、まるで飼い主の帰りをずっと待っていたペットのように甘えていた。

しかし、ミライさんは相変わらず冷静だ。
視線を俺に向けると、口を開いて話し出す。

「ツバサの事だ。
この下剋上の内容が、白金バッジを賭けるに相応しいものではない、とでも思ってるんだろう?」

「!っ、……」

図星の言葉にピクッと反応してしまった俺は、言葉を返せずに俯いた。
そんな俺を、まるで全てを見抜いているかのようにミライさんは続ける。

「ミヅクはね、初め本当に毒を飲むつもりだったんだよ」

「!っ、……え?」

「盃に本当に本物の毒を入れて、自らも命を懸けてこの下剋上に臨もうとしてたんだ」

「っ……」

その言葉に顔を上げてミヅクさんを見ると、ミヅクさんはミライさんに抱き付いたまま俺に視線を向けて「ベッ」と舌を出して意地悪そうに笑った。

「だーかーらぁー!それはミライきゅんのたーめ!別にツバたんの為じゃな……」
「ーーミヅク。少し黙っててくれるかな」

今度はミライさんがミヅクさんの言葉を遮り、宥めるようにミヅクさんの頭をポンポンッと撫でながら俺に言った。

「ミヅクは自らの命を懸ける気持ちでこの下剋上に臨んでいた。
そして、ツバサ。君もだろう?」

「ミライ、さん……」

「君も強い気持ちで、真剣にこの下剋上に挑んでいた。違うのかい?」

その言葉に、グッと胸が熱くなってくるのを感じた。
ミライさんの言葉に、俺は本当に大切なものに気付く。
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