片翼を君にあげる③
「大事なのは勝負の内容じゃなくて、勝負する者同士がそれに懸ける志し、じゃないかな?
そう言う点では、この下剋上は白金バッジの価値に相応しいものだ、と……僕は思うけど」
その通り、だったーー。
ミヅクさんは掴めない人だから、俺はその先入観から白金バッジをミヅクさんから受け取る、と言う事に下剋上の内容しか見ていなかったんだ。
ミヅクさんは地位や白金バッジに興味がない人だから、あっさり譲ってくれたんじゃないか……。と、疑い、下剋上の内容にその価値を見出そうとした。
けど、違った。
ミヅクさんは、この下剋上に命を懸けてくれていたんだ。
それは、全く軽くない……むしろ重すぎる程の、下剋上に違いなかった。
ようやく、そう思えた俺。
すると、ミヅクさんがミライさんから離れ、もう一度俺の方に歩み寄ってくると……。
「ヴァロン様を超えてよね?ツバたん。
そして、ミライきゅんと最高の下剋上をしてよ」
そう言って、俺に自分の白金バッジを差し出した。
「ガッカリさせたら、そのバッジはボクが取り返す。
その時は、本当に毒を使ってでも、ねっ?」
その声のトーンで、分かった。
ミヅクさんが白金バッジに執着がないなんて、嘘だ。
確かに、自分自身の為じゃないかも知れない。
ミライさんの為なのかも知れない。
けど、その声には間違いなく、ミヅクさんの白金バッジに対する想いが感じられた。
それを感じて、更に熱くなる胸。
「っ、約束します!」
俺は、差し出されたミヅクさんの手を両手で包み込むようにして、白金バッジを受け取る。
「俺、もっともっと……強くなります!!」
上手く言葉に出来ない。
それ以上の言葉は、見付からなかった。
強くなるーー。
力だけじゃない。
心も身体も……色んな意味で、俺は強くなる。
そんな新たな気持ちで手にした白金バッジは、今まで自分が手にしてきたどんな物よりも重たかった。
【ついに一つ目の白金バッジを獲得したツバサ!!
命の大切さ、重みを知って新たなスタートを切ったツバサは、次回ある人の元へと向かいます。
次回更新は11月24日(金)を予定しております(^^)】