片翼を君にあげる③

何で、今の今まで気付けなかったんだろう。
ランの事で辛くて苦しんでいたのは、自分だけじゃない。
みんな、みんな……自分があの時こうしていれば、と悔やむんだ。
大切な人が悲しんでいる姿を見て、己のいけなかったと思う部分を探ってしまうんだ。

でも、違う。
誰も悪くない。
ジャナフのおかげで、俺は今そう、ハッキリと言える。だから、今度は俺が伝える。

「ランの事は、誰が悪い訳じゃないんだっ」

俺だって、今も思う。
俺が恐れずに、天使の能力(ちから)をもっと早く受け入れていたら何かが変わっていたのか?、って……。
先見の能力(ちから)を使えたら、運命を変える事が出来たんじゃないか、って……。

けど、もしも俺がランの立場なら、そんな風に思ってほしくない。
自分の事で、大切な人にいつまでも苦しんでほしくない。

自分の分も、強く、長く、生きてほしいーー。

「俺の傍に、居てくれよ……っ」

「っ、ツ、バサ……」

「これからもずっと……。俺と居て?ジャナフ」

一緒に、今生きてる人と幸せに生きてほしいーー。

俺はそう思うから、きっとランもそうだ、って思える。
本当のランは優しくて、自分の事よりも他の誰かの幸せを願える美しい心の持ち主だった。
だから、

ランは、誰も恨んでなんていないーー。

残された人達が、負の感情の連鎖で崩れていく姿なんて望んでないんだ。

俺が気持ちを伝えるように抱き締め続けていると、前に回していた手をジャナフがギュッと握ってくれた。
返事を言う代わりに、俺の手を取ってくれた。
その暖かい温もりにまた励まされて、俺は次の下剋上の前にやるべき事に気付く。

「……ジャナフ。
俺と一緒に、行ってほしい所があるんだ」

この気持ちを、伝えなくちゃいけない。
俺がランの気持ちを、想いを、今1番伝えなくちゃいけない相手がいた。

それは、ランの事で今誰よりも1番自分を責めている、レノア(あいつ)……。

……
…………。

【次回更新は12月1日(日)を予定しております。
果たして、ランの気持ちを伝えるツバサの想いはレノアに届くのかーー……?】
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