片翼を君にあげる③

……
…………けれど、それももう限界だ。

私の妾になれっ……。
ノゾミ、私はそなたの事がーー……。

嫉妬出来る立場ではない。
彼女を独占したい、と思う資格もない。
それでも、どうしようも出来ないこの気持ちを、私はどうすれば良いのだろうか?

瞬空(シュンクウ)、もういいだろう。いい加減国に帰って来い。
お前ももうすぐ四十。本妻も三十だ。さっさと正式に護衛隊長の座に就き、世継ぎをこさえろ』

もう、私には時間がない。
ならばせめて、彼女がもう一度あの日のように……。少女のような笑顔を取り戻せるように、私は最初で最後の贈り物をしたかった。

だから、決めた。

……
…………。

ツバサ殿との下剋上の内容を、こうする他になかった。

「珍しいね、瞬空(シュンクウ)。君が僕に用、なんて……」

私が訪れたのは、ずっと私が超えられなかった相手。同じ白金バッジの夢の配達人であり、現最高位に立つ……そう、ミライ殿の元。

「ミライ殿、お願いがある」

白金バッジを初めて手にしたあの日、私は笑う事が出来なかった。
代わりにノゾミが、私の分まで喜ぶように笑ってくれた。

あの時、一緒に笑えば良かったーー……。

ずっとずっと、彼女から心からの笑顔が消えてしまってから……そう悔やんでいた。
だから私は、あの日の後悔を、もう一度やり直したい。

「私と、下剋上をして頂きたい」

最初で最後。
主の為でも、祖国の為でもなく、自分と愛する人の為に……私はこの剣を振おうと思った。

……
…………。
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