片翼を君にあげる③
綺麗なのに……。
どこか儚げな瞳の貴方に、私は恋をしたーー。
その人は、すごく強くて……。
夢の配達人の中でも一目置かれる存在で在りながら、いつもどこか寂しそうだった。
だから、つい、気になってしまったわ。
私よりも、うんと大人だから……。
相手になんて、してもらえるとも思ってなかった。
ただ、ね。
もう少しだけ、その瞳を近くで見たかったの。
だから、勇気を出して近付いて、傍に居たの。
そしたら、今度は笑顔が見たくなった。
無表情か、難しい表情ばかりの貴方を、私は笑顔にしたかった。
……でも、駄目ね。
私は、貴方の特別にはなれないわ。瞬空。
初めて貴方に抱かれた夜は、それだけ幸せだった。それなのに……。
「私達の関係に、愛の言葉も約束の言葉も必要ありません。
その代わり、一緒に居られるひと時だけは、私から目を逸らさないで……」
最初はそう思えていた感情が、徐々に徐々に……。貴方との時間を重ねれば重ねる程に、嘘へと変わっていく。
私だけを見てーー。
抱き合っていた身体が離れ、私から離れていくその背中にすがり付いて引き止めたくなる。
行かないでーー。
右耳に揺れる耳飾りを見る度に、痛む心の言葉が今から口にも飛び出してしまいそう。
私を、貴方の特別にしてーー。
……
…………どんどん、どんどん。
可愛くなくて、醜くなっていく気がした。
可愛いお洋服や綺麗なお化粧じゃ、もう隠せない。
上部だけの笑顔じゃ、もう本当の心を隠せないの。
だから、お願い。
もう、私を見つめないで……瞬空。
……
…………。