片翼を君にあげる③
【ミライside】

僕はノゾミにとって、ずっと良い兄ではなかったーー。

夢の配達人の事。
白金バッジの事。
ヴァロンさんの事。
ツバサの事。
自分の中での大切なものに夢中で、僕にとって妹と言う存在の優先順位は低かった。

だから、家族でありながら、同じ血を分けた存在でありながら、一緒に過ごした時間はとても少ないし、兄妹としてよりも夢の配達人とその秘書としての付き合いの時間の方がおそらく長い。

『お兄ちゃん!』
『お兄ちゃん!あそぼ〜!』

昔、そんな無邪気な言葉と笑顔を「忙しい」と上部の笑顔で誤魔化してかわして、無視し続けたのは自分だった。

それなのにーー……。

愛おしい人を想って悩む姿に。
本当は寂しがり屋で弱いクセに強がる姿に。
叶わない恋と知りながら、諦めきれない不器用な姿に……。

ああ、僕達はなんて似ているんだろうねーー?

そんなノゾミの姿を見た時、心の底からそう思った。

気付くのが遅かった。
しっかりとノゾミを見るまで、気付けなかった。
けれど、一度気付いてしまったら気になって気になって仕方がなくなってしまった。

僕にもあったんだ、兄として妹を想う気持ちーー。

悲しみや苦しみを取り除いてやりたい。
愛する者と幸せになってほしい。

そして、もう一度笑顔になってほしいーー……。

幼い頃に見せてくれた、あの眩しい笑顔に。
だから、僕は……。

「……悪いけど、僕は負けないよ」

勝負の相手、目の前の男。瞬空(シュンクウ)に向かって僕は呟いた。
その呟きに瞬空(シュンクウ)が少し驚いたように目を見開く。そして、言った。

「意外、ですな。貴殿の口からそんな言葉が聞けるとは思わなかった」

瞬空(シュンクウ)はここまでの戦いの時間と今の僕の言葉から、全てを察したようだった。
だから、僕もつい、本音を漏らす。
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