片翼を君にあげる③
【瞬空side】
あの日を思い出す。
私が白金バッジを手にした下剋上で、幼いノゾミは熱い声援を送ってくれた。
私よりも、身内よりも、誰よりも必死になってくれた。
強くなるのが当たり前だった。
勝つ事も、最強でいる事も当然でなくてはならない。と、故郷で言われ続けていた私にとって、そんな風に自分を応援してくれる存在は初めてだった。
だから、分からなかった。
私の為に必死になれるノゾミが。
私に微笑みかけてくれるノゾミが。
私が免許皆伝を告げた時に、「嫌だ」と言ったノゾミが……。
ーー……でも。
今なら分かる。やっと、分かった。
ノゾミ。
私は其方に愛され、そしてまた私も、其方を愛しているのだ。
私の人生の中で、1番必要ないと思っていた感情の筈だった。
むず痒く、どうしていいのか分からず、胸を掻き立てられる。
一見、強さを求める私には邪魔なものにすら思える。
けど、不思議なものだ。
其方の声援は、いつだって私の背中をグッと強く押してくれて……。もう一歩、と限界の向こうへと導いてくれるのだ。
……
…………。
負ける訳には、いかないーー。
私も、ミライ殿も同じ気持ちだった。
おそらくその想いの強さは、どちからが上か、なんて分からない程に……。
戦えば、どちらかが勝者になり、どちらかが敗者になるのは当たり前。
相手が例え自分よりも格上だろうが、格下であろうが負けたくはない。故に、"楽しい"、"嬉しい"などと心弾む事など今までなかった。
けど、私は今、ミライ殿を見て笑っていた。
ミライ殿も、笑っている。
互いに負けられない、負けたくない戦いである筈なのに、笑っていた。
曲剣を両手で持ち、構えると、ミライ殿も両手に拳を握り、片足を少し後ろに引いて腰を落として構える。
次の一撃で、全てが決まるーー。
きっとミライ殿も、そう感じていたに違いない。
私とミライ殿は短く息を吸うと、同時にその場を駆け出した。
あの日を思い出す。
私が白金バッジを手にした下剋上で、幼いノゾミは熱い声援を送ってくれた。
私よりも、身内よりも、誰よりも必死になってくれた。
強くなるのが当たり前だった。
勝つ事も、最強でいる事も当然でなくてはならない。と、故郷で言われ続けていた私にとって、そんな風に自分を応援してくれる存在は初めてだった。
だから、分からなかった。
私の為に必死になれるノゾミが。
私に微笑みかけてくれるノゾミが。
私が免許皆伝を告げた時に、「嫌だ」と言ったノゾミが……。
ーー……でも。
今なら分かる。やっと、分かった。
ノゾミ。
私は其方に愛され、そしてまた私も、其方を愛しているのだ。
私の人生の中で、1番必要ないと思っていた感情の筈だった。
むず痒く、どうしていいのか分からず、胸を掻き立てられる。
一見、強さを求める私には邪魔なものにすら思える。
けど、不思議なものだ。
其方の声援は、いつだって私の背中をグッと強く押してくれて……。もう一歩、と限界の向こうへと導いてくれるのだ。
……
…………。
負ける訳には、いかないーー。
私も、ミライ殿も同じ気持ちだった。
おそらくその想いの強さは、どちからが上か、なんて分からない程に……。
戦えば、どちらかが勝者になり、どちらかが敗者になるのは当たり前。
相手が例え自分よりも格上だろうが、格下であろうが負けたくはない。故に、"楽しい"、"嬉しい"などと心弾む事など今までなかった。
けど、私は今、ミライ殿を見て笑っていた。
ミライ殿も、笑っている。
互いに負けられない、負けたくない戦いである筈なのに、笑っていた。
曲剣を両手で持ち、構えると、ミライ殿も両手に拳を握り、片足を少し後ろに引いて腰を落として構える。
次の一撃で、全てが決まるーー。
きっとミライ殿も、そう感じていたに違いない。
私とミライ殿は短く息を吸うと、同時にその場を駆け出した。