片翼を君にあげる③
【ミライside】

(ノゾミ)は試合終了を告げると、一目散に倒れた瞬空(愛しい男)の元へ駆け寄り介抱を始めた。

悔しいーー。

けど、それ以上に何だか嬉しくて、心は晴れ晴れとしていた。

僕は地面に落ちていた自分の上着を拾い、観戦席に居る最高責任者(マスター)の元へ向かう。
すると、そんな僕に駆け寄って来たのはミヅク。

「ミライきゅん!ケガ、大丈夫っ?手当てするからココに座って!」

勝利を喜ぶよりも、僕の身体の心配をしてくれる。
そんな姿を見て何故だか笑みが溢れたのは、以前よりも僕が大人になれた証だろうか?
きっと昔の僕なら、自分の身体(そんな事)よりも勝利や結果を喜んで欲しかった。

「僕は後で平気。
それより、瞬空(シュンクウ)を先に診てやって?」

「えぇ〜っ、でもさぁ〜……」

「頼むよ。ねっ?ミヅク」

僕がそう言って頭を撫でると、ミヅクは拗ねたような、でも少し照れたように口を尖らせて「分かったよぉ〜」って瞬空(シュンクウ)の方へ走って行った。

ミヅクを見送り最高責任者(マスター)に視線を移すと、僕の気配を察した最高責任者(マスター)が懐から封筒を取り出して差し出す。
ツバサが書いた、僕と瞬空(シュンクウ)のどちらの勝利に賭けていたのか、の結果が書かれた紙だ。
受け取った僕は封筒から二つ折りにされている紙を取り出し、広げる。

そこに書かれていたのは、『ミライ』。
間違いなく僕の名前だった。

その力強い、迷いのない文字を見れば、ツバサが僕を信じていてくれた想いを強く感じる。

あぁーー……。
この瞬間は、間違いなく、白金バッジになって、あり続けて……。1番良かった、と、幸福を感じた瞬間だった。

自分の名前が書かれたその紙ですら愛おしくて、口付けたくなる衝動を抑えて……。僕は、ツバサに目を移した。
ツバサもまた、少し離れた場所から僕を見ていた。
< 142 / 168 >

この作品をシェア

pagetop