片翼を君にあげる③
「二つめの白金バッジ獲得、おめでとう。
でも、次は簡単じゃないからね?1番楽しめる下剋上の内容を考えておく。
日程は後日連絡するから、しっかりとコンディションを整えておくようにね」
僕を見つめる輝く瞳。
こうして瞳と瞳を合わせて言葉を交わせたら、それだけで僕にとっては愛を伝えるのと同じくらいに胸が高鳴る。
「はいっ!よろしくお願いしますっ!!」
真っ直ぐで生真面目な返事。
ビシッ!って効果音がピッタリな程に姿勢正しく僕に深々と頭を下げると、暫くして顔を上げたツバサはその場を駆け出して訓練所を出て行った。
ようやく、もうすぐ僕の夢も叶うーー。
『ツバサに僕の白金バッジを奪ってもらう』
その夢を抱いてから、ただただひたすらヴァロンさんから引き継いだ白金バッジを守り続けて来た。
その夢が叶うのなら、僕はもう……それ以上の自分の幸せは望まない。
「……父さん、お願いがあるんだ」
「!……。何ですか?」
父さん。
久々にそう呼んだ僕に、父さんはとても驚いていた。
無理もない。夢の配達人になってからはずっと、最高責任者としか呼んでこなかったもんね。
でも、今は……久々にそう呼びたかった。
「勝負は僕の勝ち。
でも、試合前に約束してた瞬空の話を、聞いてあげてほしいんだ」
「……」
「お願い」
そう頼む僕を見て、父さんが微笑みを浮かべながら頷いてくれた。
その表情は昔、幼い僕に向けてくれた笑顔と同じで……。何だか懐かしい、暖かい気持ちがじんわりと胸に広がった。
春の訪れと共に、何かが変わっていくのかも知れないーー。
そんな風に、僕は感じていた。