片翼を君にあげる③
「ん、ごめん。俺も良く分からない」
「!……え?」
「よく分かんない。
……けど、今のジャナフを見てたら、そう思った」
そう答えて、ツバサは「ごめん」って感じで微笑むと、ただボクの隣に座って居てくれた。
白金バッジ二つ目を手にして、きっと、レノアーノ様達に報告したり、もっと喜んだりしたい筈なのに……ただ、ボクの傍に居てくれた。
ボクの僅かな異変に気付いて来てくれて、傍に、居てくれるんだーー。
それが言葉に出来ないくらいに嬉しくて、やっぱり彼を大好きだ、って思った。
ーーそう、ボクはツバサが好きだ。
ツバサが困っていたら全力で助けるし、ツバサがもしも危険に曝されたらボクは喜んで身代わりになるだろう。
ツバサの幸せの為ならば、ボクは自分の事なんてどうでもよくなっちゃうんだ。
でも、気付いた。
"もう一つの好き"が、自分の中にある事に……。
ツバサがレノアーノ様の事が好きでも、1番大切でも、ボクの胸は痛まなかった。
むしろ、応援したいとさえ思った。
ボクのツバサに対する想いは、そういう好き。
でもね、ノゾミさんには違ったんだ。
瞬空さんを想ってるノゾミさんを見ているのを、嫌だ、って感じていた自分が居たんだ。
初めはそれを、自分の母親と彼女を重ねているからだ、って思ってた。
いや、きっと、そう思おうと……してたんだよね。
けど、ツバサが「違う」って言ってくれたから、ボクはようやく自分の気持ちに気付く事が出来たんだ。
「ありがとうね、ツバサ」
ボクが微笑み返してそう言うと、
「甘い物でも、食べに行くか?」
って、ツバサが苦笑いしながら言った。
そんな彼を見て、ボクは「プッ」と吹き出して笑う。
「いいよ、無理しなくて!ツバサ、甘い物苦手じゃない!」
「あぁ、うん……だから、その、俺は飲み物だけでいい」
正直な彼は、表情も言葉も全く嘘を隠せない。
でも、申し訳なさそうに目を泳がせながらも、気を遣ってくれているのが分かった。
ボクは長椅子から立ち上がるとそんな彼の前に行って、前のめりになって言う。