片翼を君にあげる③
そして、何よりきっと、俺が思いたいんだ。
愛する女性はちゃんと、愛されて生まれてきたんだって。
そう、思いたかったんだ。
店主さんは、俯いて言った。
「君が、あの子の恋人で良かった」
その呟きはとても小さい声で、泣いているのかと思った。
でも店主さんは、すぐに顔を上げて笑顔で言った。
「指輪の件、喜んで……いや、謹んでお引き受け致します。
どうか、幸せになって下さい。それが、私の願いです……っ」
そう言う店主さんの顔は、俺には父親の顔に変わって見えた。
愛娘を送り出す、父親の顔に……。
「はい、必ず。
必ずレノアと幸せになって、また一緒にここへ来ます。約束致します」
俺は深く、深く、頭を下げた。
……
…………。
そしてその後、どんな指輪にするかの話し合いをして……俺はお店を後にした。
帰り道を歩いていると、頬を撫でる風にはいつしか冷たさはあまりなくなり。木々や花を見れば、暖かくなる季節を待つように蕾が膨らんでいる。
もうすぐ春だ。
春が終われば、夏が来る。
サリウス様と約束した1年が、来る。
1年以内に、金バッジ7つと白金バッジ3つを下剋上で勝ち取ると言う約束。
残るバッジは、ミライさんの持つ白金バッジのみ。
残された期間内に、果たして自分はミライさん相手に白金バッジを奪えるのかーー?
不安もあった。
だが、それ以上に震えた。
緊張からではない、心待ちにしている楽しみだからだ。
拳をギュッと握り締めた時、ちょうど差し掛かった路地裏。
そうここは、去年の夏。レノアとアクセサリーショップの帰り道に、久々にミライさんと会った場所。
そして、抵抗も、反撃する隙もなくやられた場所だ。
あの時、俺はただ怖かった。
ミライさんとの実力の差を感じて……。いや、すっかり弱くなっていた自分の心が、全てを諦めていて戦えなかった。
でも、今は違う。レノアと再会して、色んな人達と触れ合って、経験して……もう一度、立ち上がる事が出来た。
【今回は1ページ更新でごめんなさいm(_ _)m
次回はこちら3巻を最後までと4巻の始まりを一気に更新致しますので、お待ち頂けたら幸いです(^^)
亀更新に関わらず、いつも読んで下さり本当にありがとうございます!!】