片翼を君にあげる③

『ふふっ、いいわね!』

「何が?」

『ジャナフ君と、相変わらず仲が良さそう。
クリスマスパーティー、遠慮しないでジャナフ君も来てくれていいのに』

「ああ。俺も誘ったんだけど、「せっかく幼馴染みで久々に集まるんでしょ?今回は遠慮する」ってさ」

『そっか。優しいね!』

「ああ。また別の機会に、会ってやって?」

『うんっ!勿論!』

そんな風に話して癒されながら、俺が隠れ家の広場まで来るとレノアが急に「あ!」と声を上げた。

「レノア?どうした?」

『ツバサ、今見たっ?』

「何を?」

『流れ星!今日は星が綺麗に見える日なのよ?』

「あ〜……わり、俺今隠れ家だから地下なんだ」

そう言いながらも、レノアの言葉に思わず頭上を見上げてしまう。
目に映るのは隠れ家の上にあるカジノを隔てる床だが、そっと目を閉じると何だかレノアと同じ光景が見える気がした。

『そっかぁ、残念……』

「いいよ、レノアが見られたんなら。代わりにお願いしといて?」

『うん、分かった!何をお願いする?』

「そうだな〜……。
"みんなと笑顔で会えますように"かな?」

『……ふふっ。もうすぐ叶うね!』

「ああ、楽しみだ」

みんなと笑顔で会えますようにーー。

その願いが叶うと、俺達は信じて疑わなかった。
星に願わなくても、当たり前のようにその日を迎えられる、って……信じていた。

『今年最後の下剋上、頑張ってね!』

「ああ。必ず成功させて会いに行くよ」


《未来を()先見(さきみ)能力(ちから)、君はまだ目覚めていないようだね。
私には、この未来(さき)がすでに視えている。君はいずれ、今日契約を断った事を必ず後悔するよ》


天使の言葉なんてすっかり忘れて、"その時"が近付いているなんて……。俺は、思いもしなかった。

「じゃあ、おやすみ」

『うん!おやすみなさい』

眠る前の挨拶を交わして、ポケ電の通話ボタンを切った俺は……。次にまた、彼女の明るく元気な声を聴ける、って、思ってた。

……
…………。
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