片翼を君にあげる③
***
呼び鈴を鳴らす事にすら時間を取られたくなかった俺は、レノア宅の敷地内への侵入を遮る大きな門の警備を無視して塀を駆け登った。
天使の能力を使えば、俺にとってどんな防犯装置も子供騙し。パルクールで培った身体能力を更に天使の能力で上げれば高い壁は越えられるし、防犯カメラに映らず死角を通る事も出来る。
普段は例え任務であろうと心が痛む事から、なるべく使わないようにしてきたが……。今はそんな事すら考えられなかった。
広い敷地内を駆け抜け、家の付近まで辿り着いた俺は1番鍵が甘い窓を本能的に探していて、一つの窓に狙いを定めると、能力で解除して中に侵入する。
ーー……ッ?
一階はシンッとしていた。
けど、足を進めようとした俺は妙な気配を感じてゾクリッと冷や汗が吹き出す。
足を前に踏み出すのが怖い。
空気が重く、身体にのしかかってくるようだ。
以前にレノア宅を訪れた時とは明らかに違う雰囲気が、この家の中に漂っている。
っ……この嫌な感じ。嘘、だろ……?
俺は、その辺りに漂う嫌な空気を知っていた。
これは、そう、以前にも感じた事がある。初めて天使に会った時に訪れた……シャルマ邸の空気によく似ていた。
何故、レノア宅からシャルマ邸の空気を感じるんだーー……?
その答えは、この後すぐに分かる事になる。
俺は気持ちを奮い立たせて足を進めた。
静か過ぎる家の中。レノア宅ならば、使用人達が家内を歩き回っていてもおかしくない筈なのに、静まり返っている。
足を進めれば進める程、嫌な鼓動が響いて苦しい。上手く呼吸が出来なくて、酸欠で頭痛が痛くなる。
それでも、"行かなくては"と、俺が二階に上がる階段に足を進めた時だった。
「っ、姉さん……!!もう、やめてくれっ……!!!」
ーー……ライ?
確かに耳に届いたライの声。
俺はその声にハッとして、全速力で階段を駆け上がった。
呼び鈴を鳴らす事にすら時間を取られたくなかった俺は、レノア宅の敷地内への侵入を遮る大きな門の警備を無視して塀を駆け登った。
天使の能力を使えば、俺にとってどんな防犯装置も子供騙し。パルクールで培った身体能力を更に天使の能力で上げれば高い壁は越えられるし、防犯カメラに映らず死角を通る事も出来る。
普段は例え任務であろうと心が痛む事から、なるべく使わないようにしてきたが……。今はそんな事すら考えられなかった。
広い敷地内を駆け抜け、家の付近まで辿り着いた俺は1番鍵が甘い窓を本能的に探していて、一つの窓に狙いを定めると、能力で解除して中に侵入する。
ーー……ッ?
一階はシンッとしていた。
けど、足を進めようとした俺は妙な気配を感じてゾクリッと冷や汗が吹き出す。
足を前に踏み出すのが怖い。
空気が重く、身体にのしかかってくるようだ。
以前にレノア宅を訪れた時とは明らかに違う雰囲気が、この家の中に漂っている。
っ……この嫌な感じ。嘘、だろ……?
俺は、その辺りに漂う嫌な空気を知っていた。
これは、そう、以前にも感じた事がある。初めて天使に会った時に訪れた……シャルマ邸の空気によく似ていた。
何故、レノア宅からシャルマ邸の空気を感じるんだーー……?
その答えは、この後すぐに分かる事になる。
俺は気持ちを奮い立たせて足を進めた。
静か過ぎる家の中。レノア宅ならば、使用人達が家内を歩き回っていてもおかしくない筈なのに、静まり返っている。
足を進めれば進める程、嫌な鼓動が響いて苦しい。上手く呼吸が出来なくて、酸欠で頭痛が痛くなる。
それでも、"行かなくては"と、俺が二階に上がる階段に足を進めた時だった。
「っ、姉さん……!!もう、やめてくれっ……!!!」
ーー……ライ?
確かに耳に届いたライの声。
俺はその声にハッとして、全速力で階段を駆け上がった。