片翼を君にあげる③
すると、一緒に操られ、周りに居た使用人達も力が抜けたようにバタバタと床に倒れていって……。辺りから、spellbindの嫌な空気も消えていった。
そして同時に、ランの左手首に着いていた桃色の石のブレスレットが壊れ、パラパラと床に落ち、転がっていく。
暗示を解いた途端に壊れたそれを見て、俺は気付いた。
このブレスレットに、強い怨念が宿っていたのだ、とーー……。
それを毎日大事に着けていたランは、徐々に、徐々に、心に出来ていた溝に邪念を注がれてしまい……簡単に spellbindの暗示にかかってしまった。
あの日。
俺が夏祭りに行かなければ……。
俺がブレスレットをプレゼントしなければ、ランはこんな事にならずに済んだんだーー……。
《未来を視る先見の能力、君はまだ目覚めていないようだね。
私には、この未来がすでに視えている。君はいずれ、今日契約を断った事を必ず後悔するよ》
天使に宣告されていた言葉の意味を、俺はようやく理解した。
こうなる事を知っていたら、俺はあの時……。
天使の手を、取ったのだろうかーー?
……
…………。