片翼を君にあげる③
夢の配達人隠れ家、訓練場ーー。
シュッ……!
……、…………トスン。
「……。
……、……また、外れた」
自らの放った矢が、前方の的ではなく……。いや、的どころではなく、全く届かず地面に刺さる様子を見てボクは悲しくなった。
確かに、まだまだ経験は浅いし、ボクの居る位置から的までは28mと言う結構な距離。
しかし、それにしても真っ直ぐに飛ばずに地面に突き刺さる、って……。間違いなく距離以前の問題な気がした。
ここまで見守ってくれている読者様はすでにお気付きだと思うが、ボクにはきっと戦闘センスがないのであろう。
けどね、けどね!ボクなりに頑張ろうとしてるんだよ?
今日は訓練場にある弓道施設で、ノゾミさんに弓矢を教えてもらう予定なんだ。そこで!待ち合わせ時間よりも早く着いた事から、見ての通り自主練習をしていたのだ。
……が、結果はご覧の通り散々。ボクの居る位置から的に続くまでの地面には、数十本の矢が点々と落ちている。
「やっぱり、ボクは戦闘センスが0なんだな……」
苦笑いを浮かべて溜め息を吐きながら、地面に落ちている矢を回収。
ツバサと一緒に蓮華国へ行き、様々な経験をして、少しながら成長したと思っていたが……。どうやら、そうでもないようだ。
少しでもレベルアップして、ツバサの役に立ちたいんだけどなぁ……。
拾った矢をきゅっと握り締めながら、ボクはツバサの事を想っていた。
ツバサがクリスマスの事件で大切な身内を亡くしてしまった事は、最高責任者に聞いて知っていた。
お葬式に行こうかと思ったけど、身内だけでひっそりとやる、って聞いたし、何よりボクが行っていいものか?と迷って……結局行けなかった。
それから暫く、ツバサには会えていないーー……。
自宅療養する、って聞いたっきり未だに寮には戻って来ていないし……。通信機に、連絡もないんだ。