片翼を君にあげる③

そう。
俺は、死にたい、って思ってた。
ランが命を落としたあの日。その原因が自分である事を知って…………。

でも、……。

「そう思ったのに、怖いの?本当に自分が死ぬ、って思ったら、怖くなっちゃった?」

顔だけこちらを振り向いて、俺を見つめるミヅクさんの瞳が真紅色に変わっていた。その、"笑っているのに笑っていない"眼差しに嘘がつけない。

「あまり思い上がってると、ホントに死んじゃうよ?ツ〜バたん」

ーー……俺は、本当に、"死にたいと(そう)思っただけ"だった。

本当に死ぬ事なんて想像出来ていなければ、死ぬ覚悟だって出来ていない。
思うだけで……。結局、前に進めないのをランのせいにしていただけだった。

その証拠に、俺は今、ミヅクさんとの下剋上で死を身近に感じて震えている。

『これで、っ……。姉さんの死を言い訳にして、立ち止まったりしたら……僕は絶対に許さないッ。
白金バッジを諦めたり、レノアとの事を諦めたりしたらっ……絶対に、許さないからな!』

……そしてようやく。
ライが俺の胸ぐらを掴んで、涙を堪えながら言ってくれた言葉の重さを知った。

双子の姉という、自分の半身を失ったようなライが、今でも休まず調査官になる為に必死に前を向いて頑張っているのに……俺が立ち止まっていてどうするんだ!!

そう思ってギュッと拳を握り締めたら、俺の手首に視線を移したミヅクさんが言う。

「ターコイズとアマゾナイト……」

「!……え?」

「その組み合わせの石の効果は、目的を達成したり、夢を叶えたりしようとする人に対してとても素晴らしい助けをしてくれる」

ミヅクさんの視線の先にあるのは、ランが俺にクリスマスプレゼントとして用意してくれていた天然石のブレスレット。

「それをキミにプレゼントした人は、そんな願いを強く込めたんだろうよ。……きっと、ね?」

ミヅクさんにそう言われた瞬間。
俺の心の中に、本当のランの笑顔が咲いた。
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