片翼を君にあげる③

何も言われなくても。
言葉にされなくても、ボクには分かった。

この人、ツバサの事……好き、なんだ。

そう分かった瞬間。ミライさんがツバサの次回の下剋上を仕組んだ事が、悪事を目論んだものではないと言う事を悟った。
むしろ、今のツバサに必要な事を、この人は与えようとしているのだ、と……。

瞳を合わせていれば伝わってくる。
今と向き合い、挑み、これからと言う未来をツバサに進んでほしいと言う気持ちがーー……。

「……その虹彩異色症(オッドアイ)の瞳。君もツバサと一緒で、何らかの能力(ちから)を持っているんだろう?
なら、僕がこれ以上何も言わなくても……分かるよね?」

ミライさんはそう言うと、隠そうとしなかった。自分の全てを曝け出すかのようにボクから目を逸らさずに、また微笑った。
切なさ、葛藤、孤独……。ミライさんは笑顔の中に、たくさんの感情を閉じ込めていた。

全ては、たった一つの夢の為にーー……。

気付いたら、ボクの瞳から涙が溢れて、頬を伝って床に落ちていた。
ミライさんの、自分の大切な人を護る方法を知って、胸を打たれたんだ。

「……君は、ツバサの傍に居てあげて?」

そんなボクに、ミライさんが言った。

「ツバサね、君と一緒に居るとすごく良い笑顔をしてるんだ。
君がツバサを想う気持ちとは違うかも知れないけど、ツバサは……君の事が大好きだよ」

その言葉が、また、あんまりにも美しくて涙が止まらなくなった。

かつて夢の配達人の最高峰に居た、伝説の夢の配達人ヴァロン。
彼の紡ぐ言葉は魔法の呪文のようで、たくさんの人の夢を輝かせてきたと聞く。
彼を失って、それは本当に伝説となり、もう永遠に自分の目で見る事は出来ないと思ってた。

けど、違った。
ボクの今、目の前に居る人も……そんな伝説の夢の配達人にも決して劣らない、本物だったんだ。

その言葉で。
その存在で。
見る人の心を動かすーー。

これが、白金バッジの夢の配達人なんだ。
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