*結ばれない手* ―夏―
「凪徒は「モモが自分の妹では?」と思い悩めば悩むほど、遺伝子検査に手を伸ばせなくなってしまった。元はと言えば、ここにいるのは唯一の肉親を捜すことが目的であったのに……それは自分が空中ブランコを好きな大きさと同じくらい、モモもブランコを好きだと気付いてしまったからだろうの。桜の人間だと分かれば、必ずその追手はやって来る。だから凪徒は去ったんじゃよ、後継者は自分で十分だと、父親に訴えるためにな」

 ──DNA鑑定、か……。凪徒にとってモモが『妹』では困るから。って可能性もあるかもしれないけど、な?

 暮は再び心の奥で苦々しく笑いながら、団長の言葉に相槌(あいづち)を打った。

 そして思う──自分を犠牲にして騒動が片付くと思うのか、凪徒さんよ?



 ──あいつを探し出さねばならない。



 暮はふぅと溜息を一つついた。

 気合いを入れ直す意味も込めて、おもむろにカップを手に取り団長におかわりをねだってみた──。


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