*結ばれない手* ―夏―
[27]可能と不可能
「おいっ、秀成! 俺達は車で追いかけるぞ!!」
「え……? あ、はい?」
慌てて暮は団長室に飛び込み、「車、借ります!」とソファでうたた寝を始めた団長に叫んだ。
鍵をぶん取り部屋から飛び出すや、何の騒ぎに巻き込まれたのか意味も分からず突っ立ったままの秀成を引っ張り走る。
駐車場の営業車に乗り込んでアクセルを踏み込み、やがて遠い歩道にモモの小さな背中を見つけたが、助手席の秀成は自分の眼を疑わずにはいられなかった。
「はっ、速!!」
「そうだろ~? 以前団長が言っていたが、ちゃんと専門のトレーナー付けたら、女子百メートルの世界記録、更新出来るだろうって話だぞ」
「ええっ!?」
額に汗を光らせ真剣に運転する暮の横顔を驚き見つめる。
視界に入ったのは楽しそうに口角の上がった口元。
再びフロントガラス左端に目を移し、更に小さくなった少女の姿を何とか見つけたが、人ごみをかき分けながら百メートル走の調子で二キロを走るモモに、あの華奢な身体から何処にそんなスタミナが溢れるのか、秀成には全くもって不思議だった。
「え……? あ、はい?」
慌てて暮は団長室に飛び込み、「車、借ります!」とソファでうたた寝を始めた団長に叫んだ。
鍵をぶん取り部屋から飛び出すや、何の騒ぎに巻き込まれたのか意味も分からず突っ立ったままの秀成を引っ張り走る。
駐車場の営業車に乗り込んでアクセルを踏み込み、やがて遠い歩道にモモの小さな背中を見つけたが、助手席の秀成は自分の眼を疑わずにはいられなかった。
「はっ、速!!」
「そうだろ~? 以前団長が言っていたが、ちゃんと専門のトレーナー付けたら、女子百メートルの世界記録、更新出来るだろうって話だぞ」
「ええっ!?」
額に汗を光らせ真剣に運転する暮の横顔を驚き見つめる。
視界に入ったのは楽しそうに口角の上がった口元。
再びフロントガラス左端に目を移し、更に小さくなった少女の姿を何とか見つけたが、人ごみをかき分けながら百メートル走の調子で二キロを走るモモに、あの華奢な身体から何処にそんなスタミナが溢れるのか、秀成には全くもって不思議だった。