*結ばれない手* ―夏―
[31]笑顔と目標
今までどうにか平常心を保ってきたモモも、さすがに翌朝はどんよりとしてしまった。
朝食を口に入れる動作もまるで機械的だ。
「食べなければいけない」と自身に思い込ませているというよりも、「食卓では箸を動かす」と脳みそにインプットされているかのように、皿の上が空になっても何も乗せていない箸が、口と食器の間を行ったり来たりしている。
ぼんやりどこを見ているのかも分からない死んだ魚の目のような瞳。
その下にはくっきりと隈が出来、それを目の前にして食事を進める暮の食欲も次第に減退していった。
「モ……モモ、モモ? おーい」
「……え? あ……あっ、すみませんっ!」
暮の声にハッと我に返った途端ビクンと上下に身体が跳ね、手元から離れた箸が暮に向かって飛んでいった。
それを見事にキャッチした暮は、困った顔で箸を返し、
「昨日は悪かったな。あんな会話、モモに聴かせるべきじゃなかった……」
「い、いえっ。聴かなくても、きっといつか耳には入ってきたと思いますから……」
それでもあの恐ろしいやり取りを直接聴かされるのと、他人の口からまとめられた内容を伝えられるのでは、衝撃の強さは明らかに違う。
そう思えばこそ、暮も昨夜の失態を一晩反省せずにはおられなかった。
朝食を口に入れる動作もまるで機械的だ。
「食べなければいけない」と自身に思い込ませているというよりも、「食卓では箸を動かす」と脳みそにインプットされているかのように、皿の上が空になっても何も乗せていない箸が、口と食器の間を行ったり来たりしている。
ぼんやりどこを見ているのかも分からない死んだ魚の目のような瞳。
その下にはくっきりと隈が出来、それを目の前にして食事を進める暮の食欲も次第に減退していった。
「モ……モモ、モモ? おーい」
「……え? あ……あっ、すみませんっ!」
暮の声にハッと我に返った途端ビクンと上下に身体が跳ね、手元から離れた箸が暮に向かって飛んでいった。
それを見事にキャッチした暮は、困った顔で箸を返し、
「昨日は悪かったな。あんな会話、モモに聴かせるべきじゃなかった……」
「い、いえっ。聴かなくても、きっといつか耳には入ってきたと思いますから……」
それでもあの恐ろしいやり取りを直接聴かされるのと、他人の口からまとめられた内容を伝えられるのでは、衝撃の強さは明らかに違う。
そう思えばこそ、暮も昨夜の失態を一晩反省せずにはおられなかった。