*結ばれない手* ―夏―
「おやじが……? いや、あいつとはもう無関係だ。そう伝えろ」
話は終わった。といわんばかりに車の屋根に手を掛け、凪徒は後ろを向いたが、その広い背に投げられた言葉にモモは一瞬萎縮した。
「おじ様の言葉は絶対よ。十月二十六日──『貴方は手の内に戻る』」
──え?
「アンっ!!」
凪徒が振り返り吼えた。
今にも飛び掛かり首の骨でもへし折りそうな獰猛な顔を見せる。
「一体いつからそんな万年反抗期みたいになっちゃったのかしら? 今日のところはこれで引き下がってあげるけれど、近い内に屋敷に顔を出しなさい? それと……私を『アン』と呼ぶなら、昔の貴方に戻ることね、ナギ」
「くっ……」
何を言っても勝ちを獲れない凪徒の口元には悔しさが滲んでいた。
話を終えた。といった様子で組んだ腕をほどき、日傘の柄を手に取った杏奈の艶めかしい視線は、おもむろに隣のモモに移っていった。
話は終わった。といわんばかりに車の屋根に手を掛け、凪徒は後ろを向いたが、その広い背に投げられた言葉にモモは一瞬萎縮した。
「おじ様の言葉は絶対よ。十月二十六日──『貴方は手の内に戻る』」
──え?
「アンっ!!」
凪徒が振り返り吼えた。
今にも飛び掛かり首の骨でもへし折りそうな獰猛な顔を見せる。
「一体いつからそんな万年反抗期みたいになっちゃったのかしら? 今日のところはこれで引き下がってあげるけれど、近い内に屋敷に顔を出しなさい? それと……私を『アン』と呼ぶなら、昔の貴方に戻ることね、ナギ」
「くっ……」
何を言っても勝ちを獲れない凪徒の口元には悔しさが滲んでいた。
話を終えた。といった様子で組んだ腕をほどき、日傘の柄を手に取った杏奈の艶めかしい視線は、おもむろに隣のモモに移っていった。