*結ばれない手* ―夏―

[39]真実と真相

「何だ……似合ってんじゃねぇかよ」

 事情を聴いて社長室に足を踏み入れた暮の開口一番は、凪徒のスーツ姿を目に入れての皮肉の一言だった。

「うるせ」

 バツの悪そうな凪徒が即返し、ぶっきら棒にソファへと(うなが)す。

 それに続いて腰かけようとした秀成はニヤニヤ顔を我慢出来ず、コツンと一つゲンコツを喰らわされた。

「やぁ、久し振りだね、ハヤちゃん」

 一方高岡紳士も入室しながら、隼人に懐かしそうな声をかけた。

「やはりタカちゃんの仕業(しわざ)だったかい。いや……元は『彼』の画策なんだろう? 相変わらず手回しがいい……でも、タカちゃんが動くのも分かるね。確かに……とても似ているよ──明日葉君に」

「ああ」

 そうして紳士二人は優しい眼差しでモモを見下ろしたが、モモは思わずギョッとしてしまった。

 ──か、『彼』って……ハヤちゃん・タカちゃんなんて会話からすると、きっと『タマちゃん』よ、ね……? ──珠園団長……もしかして先輩のお父様とも繋がっているんだろうか?

 が、その件については何も問い返せず、モモは凪徒の隣にいそいそと座り込んだ。


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