*結ばれない手* ―夏―
「私はその三人の娘達に事情を話しては、と持ち掛けたが、椿さんは一向に首を縦に振らなかった。思春期の娘達が最愛にしてたった一人の肉親を失い、そんな矢先に腹違いの妹を抱えた昔の女中が現れる……そんな衝撃的な事実で、少女達を傷つけるなんて出来なかったのだろうね。私は身重(みおも)の彼女を一旦自分の別荘に預かった。それで芙由子に相談してみたんだ。芙由子は即答したよ。椿さんにうちで働いてもらえとね。赤子を抱えてのお手伝いは大変だろうから、もし彼女が許すなら、その子を養女に迎えたらどうかとも……うちには息子しかいなかったからね」



 ──話が……繋がった……!!



 モモが凪徒と血の繋がり無くして『妹』になり得ようとしたのは、そういう流れがあったのだと判明し、全員の疑問が一気に腑に落ちた。

 けれどその内の三人に再びの怪訝(けげん)が湧き上がる──心筋梗塞で亡くなった父親と、三人娘のいる名家──それって……?


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