*結ばれない手* ―夏―
「もしあいつがまた現れても相手にするな。……いいな?」
「はい……」
そう一言答えてすぐに踵を返し、ぎこちない歩みで自分の車の方角へ身体を向けた。
リンの目の前を通り過ぎると、彼女は凪徒に一度視線を向けてモモの後へ続いたが、心配そうに車の手前まで見送って自分の場所へと戻っていった。
──とにかく今日が休演日で良かった……こんな気持ちでブランコなんて出来ない……。
車中で自分の財布を手に取り、とりあえず気分転換にブランチでも買ってこようとサーカスの敷地から外に出た。
陽の昇ったアスファルトの上は、もうジリジリとした暑さが漂っている。
徒歩五分程度のコンビニまで歩いただけでも、店内の涼しい空気に癒された気すらしてしまう──熱い陽差しと……あの緊張からも。
突如現れたあの美しい女性は誰だったのか。何だったのか。
理解出来たのは「サーカスへ来る前の凪徒を知っている」ということだけだった。
「はい……」
そう一言答えてすぐに踵を返し、ぎこちない歩みで自分の車の方角へ身体を向けた。
リンの目の前を通り過ぎると、彼女は凪徒に一度視線を向けてモモの後へ続いたが、心配そうに車の手前まで見送って自分の場所へと戻っていった。
──とにかく今日が休演日で良かった……こんな気持ちでブランコなんて出来ない……。
車中で自分の財布を手に取り、とりあえず気分転換にブランチでも買ってこようとサーカスの敷地から外に出た。
陽の昇ったアスファルトの上は、もうジリジリとした暑さが漂っている。
徒歩五分程度のコンビニまで歩いただけでも、店内の涼しい空気に癒された気すらしてしまう──熱い陽差しと……あの緊張からも。
突如現れたあの美しい女性は誰だったのか。何だったのか。
理解出来たのは「サーカスへ来る前の凪徒を知っている」ということだけだった。