*結ばれない手* ―夏―
思えば凪徒の過去などまるで知らないことに気付かされた。
どこから来て、どうしてブランコ乗りになったのか──長期休暇になっても戻る場所のないモモと同様どこにも帰省せず、いつも目の前に存在していた凪徒。
モモ自身が余り他人の詮索をしない性分なので、自分から質問することがなかったことも一理あるが、周りのメンバーからも、凪徒の昔を手繰るような話を聞かされた覚えがない。
女性は凪徒の父親を「おじ様」と呼んだ。
親類としての「おじ」なのか、中年男性としての「おじ」なのか。
「動き出した」と言うからには存命であることは間違いないが、凪徒は実の父親を嫌っているような素振りを見せた──何故?
──訊いても答えてくれそうもないし、その前に質問したことすら咎めるように、あのデコピンが飛んできちゃいそうだ……。
ぼんやりと飲み物の棚を物色しながら、特に考えもせず目の前の烏龍茶に手を伸ばす。
が、先に脇から現れた白く細い腕が、そのペットボトルを手にしてモモの眼前に差し出した。
どこから来て、どうしてブランコ乗りになったのか──長期休暇になっても戻る場所のないモモと同様どこにも帰省せず、いつも目の前に存在していた凪徒。
モモ自身が余り他人の詮索をしない性分なので、自分から質問することがなかったことも一理あるが、周りのメンバーからも、凪徒の昔を手繰るような話を聞かされた覚えがない。
女性は凪徒の父親を「おじ様」と呼んだ。
親類としての「おじ」なのか、中年男性としての「おじ」なのか。
「動き出した」と言うからには存命であることは間違いないが、凪徒は実の父親を嫌っているような素振りを見せた──何故?
──訊いても答えてくれそうもないし、その前に質問したことすら咎めるように、あのデコピンが飛んできちゃいそうだ……。
ぼんやりと飲み物の棚を物色しながら、特に考えもせず目の前の烏龍茶に手を伸ばす。
が、先に脇から現れた白く細い腕が、そのペットボトルを手にしてモモの眼前に差し出した。